紹介会社の存在を知る①

介護職4年目の著者TSUBOが、最近になって知ったこと。

『紹介会社の存在』です。

最初に知ったのは、新聞記事(11月初旬)からでした。記事の一部をお伝えします。

パーキンソン病などの難病や末期がんの高齢者を対象にした有料老人ホームの一部が、紹介会社に1人当たり最高150万円を支払っていることが11月4日に分かった。 共同通信が老人ホーム関係者から証言を得て、契約関連の文書を手に入れた。
紹介会社は1人入居するごとにホーム側から紹介料を受け取る。 なお、所轄する法律はなく、いくら高額でも違法ではない。関係者は、過剰な訪問看護で稼ぐことが前提で紹介料が高騰しており、異常な状態だと指摘する。 
先に別の投稿で【大手訪問看護の不正】を取り上げていた著者ですが、この記事を見て、
「こんなものが実は存在しているのか…」と驚くとともに、介護従事者として「ものすご~く嫌な感覚が芽生えた」のです。
つぎに先週、退職していくグループの管理者から聞かされた、驚くべき事実。
12月いっぱいで退職する40代男性の理学療法士Nさん。僕と入社がほぼ同期であり、人柄が良くて仕事もできる、高校からマラソンを続けているスポーツマン。とても良い職場仲間でした。
一年前から、うちのデイの隣にある看多機(看護小規模多機能型居宅介護)の管理者に指名されたのですが、人手が足りず自分が夜勤に入ったり等、マラソン練習も出来ない日々が続いており、ついに「自分の生活を優先させたいから」と退職を決意されたのです。
この看多機では管理者がよほど大変な様子で、短期間で辞める人が続いており、また職員も離職者が多く目まぐるしく入れ替わっているという、うちの鬼門のような施設です。
そのNさんのささやかな送別会を、男性職員のみ4人で催しました。
そして、その場でNさんから聞いた話に、愕然とする内容があったのです。
それは、
4年前入社した時、施設長から
「あなたには紹介料を100万払ったんだから、辞めないでね」
と、いきなり言われたとのこと。ちなみにNさんは人の悪口などめったに言わない人です。
そのNさんが「自分にしたら紹介料のことなど知らなかったのに、入ったばかりの人間にいきなりそんなことを言うのはどうなのか?今でも忘れない」と言うのです。
うちの施設長のデリカシーのなさ、人望のなさを物語っているエピソードですが、
僕がショックだったのは、
「まさか、うちの事業所は紹介料を払って人を引っ張っていたのか」
「一人に100万も出しているのか!」
「職員の低すぎる給与は、そんなやり方のせいじゃないのか?」
そんな不信感が湧いてきたことです。

しかしひとまず、うちの話は置いときます。
このようなきっかけから、介護業界の紹介会社の存在を著者TSUBOは知ることになりました。
この紹介会社の実態について、TSUBOなりに調べてみました。
まだまだ情報としては未完全とは思いますが、記事にすることにしました。
また、全体を記事にすると長くなるので2回に分けた記事にします。
➊「利用者紹介会社」の実態について
❷「人材(職員)紹介会社」の実態について

今回伝えるのは、
➊「利用者紹介会社」の実態について
施設を探す利用者は、どこの施設を選べばよいのか、全く分からないものですよね。
本来ならば、地域包括支援センターを相談窓口とし、その後、担当のケアマネジャーが利用者に適した施設を紹介する役割があるのですが、多忙なケアマネには負担が大きい業務であるためにその役割を完全にはこなしきれていなかった実態があるようです。
このような状況下で出現してきたのが「紹介事業者」です。
ケアマネに比べて「施設情報が幅広い」・「対応スピードが速い」などの利点を持つ
紹介会社が増えてきたのです。
その他の【利用者が紹介事業者を使うメリット】を挙げます。
★情報提供・アドバイスをもらえる
★契約書類の準備
★施設との契約に立ち会ってくれる
★入居後のアフターフォロー
★利用料は無料
高齢で手続きがままならない利用者側には、このようなメリットがあるのです。
「利用者ニーズがある」のが現実といえるでしょう。
ちなみに、紹介される介護施設は、民間企業のみ
【有料老人ホーム】約7割【サ高住】2割強
この二種類への施設紹介で、大半を占めています
現在全国で登録されている紹介事業者は、339法人
未登録事業者を含めると実際は、1500社以上あると言われています。
この紹介事業を行うには特別な資格は不要」となっています。
「条件なしで起業しやすい」「高齢化で需要が増える」
そういう狙いで参入する事業者が、雨後のタケノコのごとくその数を増していった
とくに高齢者人口・施設数が多い都市部での事業者数が多くなっています。
しかし、参入しやすさが仇となったか、次第に福祉の理念にそぐわないような「悪徳業者」も生まれてきたのでしょう。「法外な紹介料」を得るための。
そして同時に、過剰に増え続けた民間の有料老人ホームもついに「入居者不足」に陥いる頭打ちの状況に変化していった。有料老人ホーム運営事業者が「入居者確保に追われる」そんな時代になっていったのです。
高齢化が進むから「儲けられる」と参入した法人が多数あらわれて施設が建てられていき、次第に競合が激化して、価格競争へとすすんでいった。
そして、とくに「高い診療報酬を得られる難病患者の獲得争い」が有料老人ホーム同士で起きていった。そんな事態になっていくのです。
とくに大阪など関西において競争が激化。需要よりも供給側が大きくなり過ぎたためです。
関西の二つの大手有料老人ホーム運営会社間で激しい「入居者獲得争い」がすすみ、次第に利益追求の方針から福祉理念を捨て去り、先の「訪問看護の不正請求発生」につながっていくのです。
2022年、大阪のホーム運営会社が入居者集めのために「難病・末期がん患者には紹介料を40万から100万にUPする」というチラシを、紹介会社に配布していたという事実も明らかになっています。
「難病患者の不正報酬により月額120万売上できる」その入居者を獲得するためには「紹介料に100万払っても、すぐに回収できる」というわけです。
そしてこのような高額な紹介料も、法律がないので違法にならない。
しかし、法律的には問題がなくても、有料老人ホームが払う紹介料の原資
まぎれもなく『国の公費・介護報酬』であり、
それが過度に流れているのが、重大な問題なのです。
こんな状態を、許してよいわけがありませんよね。

国は、長らくこの状況に気づくことなく放置してきた。これが実態。

また、さらに重要な問題は

「紹介会社は、利用者ニーズよりも、高額を払う施設の紹介を優先するため、利用者へのサービスの価値が低下していること」です。

 

このような実態が最近ようやく発覚したため、

厚労省も業界(※高住連)3団体に対して

「行動指針・遵守項目」の見直しを求める通知を出されたようです。その内容は

有料老人ホームの運営にあたって、公平性・中立性を損ね、社会保障費の不適切な費消を助長するような紹介手数料が設定されることがないよう見直し、および高住連に届出されている紹介事業者による遵守徹底への働きかけを行うこと

※高住連:「高齢者住まい事業者団体連合会」

この構成団体は「全国有料老人ホーム協会」「全国介護付きホーム協会」「高齢者住宅協会」の3団体となっています。

ちなみに、高住連の「紹介事業者届出公表制度」に登録している紹介事業者は、公正・誠実な対応が期待できます、と説明されていました。

厚労省の通知を受けて、

高住連は、2025年1月からの順守項目の改定を報告しています(12/27付)。その一部を

(紹介手数料のルールに関して)

金額の定めにあたっては、家賃・管理費等の自費部分に応じた平均的な紹介手数料から大幅に上振れした金額設定を行わない。
特に、社会保障費に応じた金額設定(社会保障給付費をあてにしたとみなされる金額設定)は厳に慎むものとする。

 


TSUBOが調べた内容を記事にいたしました。

まだまだTSUBOにとっては、

高住連という組織についても全く知らないですし、よく分かっていない立場でいい加減な意見は言うべきではないと思い、この度は自分の感想を述べるのは控えさせて頂きます。

しかし、少し疑問に思う点として、高住連は有料老人ホーム等の連合会ですが、

紹介業者に対してのルールを「上からの立場」で通知していることです。この「両者の関係はどのようになっているのか?」「対等の関係ではないのか?」という点です。

何かしらの「闇の権力構図」のようなものを、僕は感じてしまうのですが…

よく知らないので、あまり突っ込むのはやめときます。

 

また実は、この紹介事業の構図においてはさらに深い問題も存在しているようです。

それは『病院サイドの関わり』の情報です。

末期がん患者や難病患者の退院に携わっている「MSW(医療ソーシャルワーカー)」や「退院調整看護師」等が『紹介業者にキックバックをもらって、患者を紹介している』という情報。

今回はもう、これ以上は述べませんが、

何よりも根本的な問題なのは、

医療や介護の世界に、営利企業が関わっていくと、

「患者や利用者ファーストではなく、営利優先になっていく」ことです。

 

「紹介手数料の高騰」の問題が、今回の厚労省の対応で改善されていくのか?

これからの成り行きを見守っていきたいと思います。

次回は続いて、

❷人材(職員)紹介会社の実態

について記事を出す予定です。

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